「DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル新訂版」(2004)によるパニック障害の診断基準を載せておきます。参考までにどうぞ。
パニック発作の基準
強い恐怖または不快を感じるはっきり他と区別ができる期間で、そのとき、以下の症状のうち4つ(またはそれ以上)が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する。
- 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
- 発汗
- 身震いまたは震え
- 息切れ感または息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛または胸部の不快感
- 嘔気または腹部の不快感
- めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
- 現実感消失(現実でない感じ)または離人症状(自分自身から離れている)
- コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
- 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
- 冷感または熱感
広場恐怖を伴わないパニック障害の診断基準
- 1.と2.の両方を満たす。
- 予期しないパニック発作が繰り返し起こる。
- 少なくとも1回の発作の後1カ月間(またはそれ以上)、以下のうち1つ(またはそれ以上)が続いていたこと:
- もっと発作が起こるのではないかという心配の継続
- 発作またはその結果がもつ意味(例:コントロールを失う、心臓発作を起こす、“気が狂う”)についての心配
- 発作と関連した行動の大きな変化
- 広場恐怖が存在しない。
- パニック発作は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)の直接な生理学的作用によるものではない。
- パニック発作は、以下のような他の精神疾患ではうまく説明されない。例えば、社会恐怖(例:恐れている社会的状況に暴露されて生じる)、特定の恐怖症(例:特定の恐怖状況に暴露されて)、強迫性障害(例:汚染に対する強迫観念のある人が、ごみや汚物に暴露されて)、外傷後ストレス障害(例:強いストレス因子と関連した刺激に反応して)、または分離不安障害(例:家を離れたり、または身近な家族から離れたりしたとき)
広場恐怖を伴うパニック障害の診断基準
- 1.と2.の両方を満たす。
- 予期しないパニック発作が繰り返し起こる。
- 少なくとも1回の発作の後1カ月間(またはそれ以上)、以下のうち1つ(またはそれ以上)が続いていたこと:
- もっと発作が起こるのではないかという心配の継続
- 発作またはその結果がもつ意味(例:コントロールを失う、心臓発作を起こす、“気が狂う”)についての心配
- 発作と関連した行動の大きな変化
- 広場恐怖が存在している。
- パニック発作は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)の直接な生理学的作用によるものではない。
- パニック発作は、以下のような他の精神疾患ではうまく説明されない。例えば、社会恐怖(例:恐れている社会的状況に暴露されて生じる)、特定の恐怖症(例:特定の恐怖状況に暴露されて)、強迫性障害(例:汚染に対する強迫観念のある人が、ごみや汚物に暴露されて)、外傷後ストレス障害(例:強いストレス因子と関連した刺激に反応して)、または分離不安障害(例:家を離れたり、または身近な家族から離れたりしたとき)
広場恐怖の基準
- 逃げるに逃げられない(または逃げたら恥をかく)ような場所や状況、またはパニック発作やパニック様症状が予期しないで、または状況に誘発されて起きたときに、助けが得られない場所や状況にいることについての不安。広場恐怖が生じやすい典型的な状況には、家の外に1人でいること、混雑の中にいることまたは列に並んでいること、橋の上にいること、バス、列車、または自動車で移動していることなどがある。
注:1つまたは2~3の状況だけを回避している場合には特定の恐怖症の診断を、または社会的状況だけを回避している場合には社会恐怖を考えること。 - その状況が回避されている(例:旅行が制限されている)か、またはそうしなくても、パニック発作またはパニック様症状が起こることを非常に強い苦痛または不安を伴いながら耐え忍んでいるか、または同伴者を伴う必要がある。
- その不安または恐怖症性の回避は、以下のような他の精神疾患ではうまく説明されない、例えば、社会恐怖(例:恥ずかしい思いをすることに対する恐怖のために社会的状況のみを避ける)、特定の恐怖症(例:エレベーターのような単一の状況だけを避ける)、強迫性障害(例:汚染に対する強迫観念のある人が、ごみや汚物を避ける)、外傷後ストレス障害(例:強いストレス因子と関連した刺激をさける)、または分離不安障害(例:家を離れることまたは家族から離れることを避ける)
ポイント
- DSM-IV-TRとは、「米国精神医学会による精神疾患の診断統計マニュアル」の第4版本文改訂版の略語です。
- DSM-IV-TRでは、パニック発作の基準が独立して設けられています。これは、パニック発作がパニック障害でない他の精神疾患においても起こりうるからです。
- DSM-IV-TRでは、広場恐怖を伴わないパニック障害と広場恐怖を伴うパニック障害の2つの診断基準があります。両者ともパニック発作が認められることが必須です。
- DSM-IV-TRでは、パニック発作の最低限の回数や時間枠は特定されていません。
- DSM-IV-TRでは、パニック発作は一般的には予期できないとしているが、予期できるものや状況依存的パニック発作の存在も許容している。
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